[1]働くことの「観・マインド」をつくる研修とは?


Q:―――なぜ、いま、「観・マインド」をつくる研修なのか?

加速的に進展するビジネス社会にあって、仕事は細分化・専門化の度を強めています。スピード化・効率化の流れの中で、ますます企業は、ヒトに専門性と即戦力を求めます。

そのために企業の人材教育は、専門性知識の獲得や業務処理能力の習得・向上を図る内容のものに偏っていきます。知識・技能系の研修を受けさせることはもちろん必要ですが、問題は偏りです。

知識・技能を身につけさせることが、イコール、プロフェッショナル人財を育てることだとの認識が人事担当者に根強くあります。そしてまた、知識・技能を身につけさせることが、組織を強くするとも考えます。働く個人側にも同様の認識があります。

後でも触れることになりますが、ほんとうのプロフェッショナル人財、組織を真に強くする人材とは、全人的にふくらみのある人財のことだと私は思っています。

企業現場での人財育成が、知識獲得・技能習得面に偏ることの結果、個々の働き手が、どんどん「知識でっかち・技能でっかち」になっています。

□ 業務はこなせるけれども、仕事をつくり出せない。

□ 上からの指示はやろうとするけれど、なぜその指示になったのか、  その背後にある意味を理解できない(理解しようとしない)。

□ 自分の関与する範囲を狭めることはあっても、関わる範囲を広げ  統合的にものごとをみようとしない(みることができない)。

□ 仕事に「長け」さえすればよいと思うようになり、   仕事を「豊かにする」、事業を社会にとって「よりよいものにする」という  意識が薄くなる。

□ 言い換えれば、仕事・事業の「処理のしかた」は考えられるけれど、  仕事・事業の「在り方」を考えることはできない。

□ 同様に、自身のキャリアの「在り方」を考えることができず、  将来のキャリアパスは会社側が用意してくれるものと期待する。

いま、株式会社ニッポンの働き手たちが、どんどん「知識でっかち・技能でっかち」化し、上のような状況が強まっているように感じます。

知識や技能よりも基底にあるマインドの部分をしっかりつくらないかぎり、真のプロフェッショナルは育ちません。そして個も組織も(もっと言えば地域も国家も)ほんとうの意味で強くならないし、健やかな成長はありません。

だからこそ、いま、「観・マインド」をつくることが大事だと思うのです。

Q:―――「観・マインド」とは具体的に何か?

ここで言う「観・マインド」とは、就労意識や仕事に向かう心持ち、就業観やキャリア観といったものです。つまり、その人の働く心の基盤としてあるもので、能力の発揮や行動特性を司る役割を果たすと同時に、働くことの意味を考え、「在り方」を考えるものです。そしてそこから夢や志、使命感といった想いを育みます。

私は下図のように、キャリアをつくる要素として「3層+1軸」を考えます。

〈第1層〉は、業務をこなすための基本要素となる知識やスキル(技能・資格)、人脈といったものです。

〈第2層〉は、上の第1層の要素をあれこれ組み合わせて成果を出すための行動特性(コンピテンシー)です。態度や習慣も広い意味でここに含まれます。

〈第3層〉は、その人が持つマインドや価値観です。

そして私たちは誰しもそれら3層を内面に保持しながら、何かに向かっていこうとする。これが〈志向軸〉です。仕事・キャリア上の目標や目的、夢、志がこれに当たります。

第1層と第2層は、言ってみれば、「HOW」(=どう行うか)の要素です。第3層は、「WHY」(=なぜやるのか)の要素です。そして志向軸は、「WHAT」(=何をすべきか)です。

いま企業の研修現場では「HOW」の習得ばかりに目がいっています。 「HOW」ばかりを熱心に習得させることで、確かに“仕事に長けた”人間はできあがるかもしれませんが、全人的にふくらみと強さをもったプロフェッショナルが育つかどうかは、また別の話です。

例えば、一人一人の社員に、いまの自分の働く動機(=「WHY」の部分)を投げかけてみてください。―――どれだけの人が、ふだんからそういうことを意識し、明瞭に答えられるでしょうか。

あるいは、一人一人の社員に、自分が向かおうとしている先に何をイメージし、何をつくり出そうとしている(=「WHAT」の部分)のかを投げかけてみてください。―――どれだけの人が、意味や使命感をもって目標や目的を具体的に描いているでしょうか。

これらの問題は、第3層の「マインド・価値観」を涵養しないかぎり解決しないのです。

◆全人的な育成が図られてこそヒトは「人財」となる ピーター・ドラッカーは『現代の経営〈下〉』の「人を雇うこと」という章の中でこう述べています。

  「働く人を雇うということは、人を雇うということである。    手だけを雇うことはできない。手の所有者たる人がついて来る」。   「今日の訓練プログラムの多くは人を柔軟にするよりも硬化させている。    理解を与えるのではなく小手先のスキルを教えている」。

昨今、例えば40代社員のキャリアクライシス問題が顕在化しつつあります。40代に向けたキャリア開発研修ができないかというご相談もしばしば受けるようになりました。20代から30代半ばまで、ひたすら現場の業務戦力として手だけ(つまり知識や技術だけ)を磨いてきたものの、やがて旬の技術を必要とする仕事を若手に引き渡すようになり、けれども管理職の道があるかといえばそうでもない。道があったとしても部下を率いることに向いていない。いわゆる非管理職ミドルたちがどう仕事と向き合い、組織の中で自分の存在意義をつくり出せるかという問題です。

40代(ましてや50代)のキャリア研修はとても難しいものです。働くことに対する観・マインドが硬直化してしまっている人が多いからです。自律的に自分の考え方・やり方で固まっているならよいのですが、「自分のキャリアをどうしていけばいいかわからない。そんなことは会社がきちんとキャリアパスを用意すべき」といった他律的で環境依存の強い観で固まってしまった場合は、もはや単発の研修ではどうすることもできません。

ドラッカーは別の箇所で、組織がヒトを最大限に活かしていくために真に必要なのは、訓練プログラムではなく、教育プログラムだと言います。すなわち手だけを訓練するのではなく、全人的に教育せよと。

「人の成長ないし発展とは、何に対して貢献するかを人が自ら決められるようになることである」と彼が指摘するように、職業人としての在り方を自律的に考えられるのは、若いころから観・マインドがそのように涵養されてこそです。

企業が人を雇い、雇った人の教育に関し、どこまで面倒をみるべきでしょうか。手だけを訓練し、いわば取り替え可能な資源として育てることでよいのでしょうか。それとも、全人的な教育を施し、その人でなければならない価値を生み出す資産として育てるべきでしょうか。前者は「ヒト=資源・人材」のとらえ方、後者は「人=資産・人財」のとらえ方です。それこそまさにその企業の「ジンザイ観」が問われるところです。

* * * * * * * * * * * 〈補足記事〉

キャリアをつくる4要素=3層+1軸 http://careerscape.lekumo.biz/genron/2013/09/post-74e4.html

「自立」と「自律」の違いを考える http://careerscape.lekumo.biz/genron/2013/09/post-7d4b.html

ヒトを全人的に育てる思想 http://careerscape.lekumo.biz/genron/2014/03/oct-6e4a.html


研修開発の考え方

キャリア・ポートレート コンサルティング
「自律した個として強い職業人」をつくる人財教育


代表:村山 昇

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