[4]働くことの本質・原理を肚に落とす


Q:―――ものごとを定義させるワークが多いのはなぜか?

観・マインドとはここでは、思考や感情をつかさどる意識基盤、あるいは、ものの見方・とらえ方として考えています。観・マインドは、自分が対面するものごとにどんな価値(善悪、美醜、真偽、是非、損得、意味、優先順位など)を与え、どう反応するかを決めるものです。こうした観・マインドは、根源的な問いを考えさせるほど、その醸成度合いや向きがわかります。

例えば、研修では次のような根源的なテーマの問いを投げかけます。

・「仕事とは何か?」「事業とは何か?」 ・「仕事・事業の目的は金(給料・利益)を得ることか?」 ・「成長とは何か?」 ・「自分は世の中に何の価値を提供する職業人か?」 ・「自律的な働き方とはどういう状態をいうか?」

観・マインドを強く醸成している人ほど、「仕事とは●●である」「成長とは●●することである」といった定義づけを自分の言葉で豊かに表現できます。そしてなぜそう考えに到ったのかと問われれば、具体的な経験や材料をあげて説明することができます。観・マインドは、具体と抽象の両輪によって醸成されるからです。

入社数年も経てばすでにさまざまな経験を積んでいます。しかし、その経験を抽象化してものごとの本質や原理をとらえているかどうかは人によってかなりの差が出ます。観・マインドの醸成は多分に抽象化能力の影響を受けるので、こうしたものごとの根っこを考えさせる習慣が必要です。

具体的な体験から本質・原理を抽象化し、観として肚に据えることがなぜ重要なのか?───それは、ものごとを個別具体的にとらえるレベルに留まっていると、永遠に個別具体的に処置することに追われるからです。そのことを次の例で説明しましょう。

下に並べたのは英単語の問題です。それぞれのカッコ内には前置詞が入ります。1つ1つ答えてください。

・a fly[      ]the ceiling (天井に止まったハエ)

・a crack[      ]the wall (壁に入ったひび割れ)

・a village[      ]the border (国境沿いの町)

・a ring[      ]one’s little finger (小指にはめた指輪)

・a dog[      ]a leash (紐につながれた犬)

……さて、どうでしょう。

正解は、すべて「on」です。

ところで、私たちは前置詞「on」を「~の上に」と習ってきました。習ってきたというか、暗記してきました。そうした暗記的なやり方で英語と接してきた人は、「天井にさかさまに止まった」とか「壁に入った」とか、「国境沿いの」などの言い表しに思考が発展しないので、それぞれの問題に戸惑ったことでしょう。そうして正解を見て、また1つ1つ「on」の使い方を丸暗記していくことになります。

これに対し、いま私の手元にある一冊の英和辞典『Eゲイト英和辞典』(ベネッセコーポレーション)の帯には、こんなコピーが記載されています───

「on=『上に』ではない」。

さっそく、この辞書で「on」を引いてみます。すると、そこに載っていたのは、下のような図でした。

「on」は本来、縦横・上下を問わず「何かに接触している」ことを示す前置詞だといいます。確かにこの図をイメージとして持っておくと、さまざまに「on」使いの展開がききます。

この辞典は、その単語の持つ中核的な意味や機能を「コア」と呼び、それをイラストに書き起こして紙面に多数掲載しています。10個の末梢の意味を覚えるより、1つの「コア・イメージ」を頭に定着させたほうがよいというのが、この辞書づくりのコンセプトなのです。

まさにここで出てきた「コア・イメージ」に基づく学習が、ものごとを抽象化して押さえることにほかなりません。

私たちは、ものごとの抽象度を上げて大本の「一(いち)」を本質・原理として肚に据えれば、以降はそれをいかようにでも具体的に展開応用することができます。

逆に言えば、抽象化によって「一」をとらえなければ、いつまでたっても末梢の出来事にその都度まちまちに対応することになります。すなわち、観・マインドが醸成されていないと、場当たり的・感情的に、情報や環境に振り回され、判断や行動が安定しないのです。そういう働き方では周囲からの信頼も得られませんし、第一、本人が疲れます。

具体的な体験をたくさん積めば自然に観が養われるというのは誤りです。抽象化させて「一」をつかませる思考態度を身につけさせないかぎり、いつまでもモグラたたき状態で事に当たることになります。

キャリア・ポートレートコンサルティングの研修が、根源的な概念を取り上げ、再考させるのはこういうところに理由があります。

* * * * * * * * * * 【補足記事】『働くこと原論』より

□ 「モデル化」して考えるとはどういうことか?  http://careerscape.lekumo.biz/genron/2014/04/post-672b.html


研修開発の考え方

キャリア・ポートレート コンサルティング
「自律した個として強い職業人」をつくる人財教育


代表:村山 昇

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